東京脱毛器男子1「男は別ファイル保存、女は上書き保存」

時代によって変わる「イケてるオトコ像」。ワイルドな男性が人気だった時代もありましたが、今の流行りは清潔感とかわいげのある男性。

 

しかし、残念ながらさまざまな理由でそのポジションにハマれない人もいます。本連載の主人公・鈴木直樹(30)もそんなひとり。

男性

ルックス学歴収入すべてが「中の中」。しかし、人並み外れた「剛毛」ゆえ、苦難の人生を送ってきました。そんな彼が六本木のタワーマンションに住む、イケイケCEOユウヤと出会い、彼のライフスタイルやモテ具合、そして手入れされた綺麗なお肌に魅せられていきます。

 

自分を変えようと決意した直樹は、イケてない過去と決別するかのように指毛、腕毛、すね毛、胸毛、尻毛、VIOラインなどを脱毛。自分を捨てた彼女に復讐するかのように、かつて想いを寄せたサークルの後輩、大人を舐めた女子大生、ミスコン出身女子などと交流していく直樹。しかし、快楽の先には大きな落とし穴があって……。

 

30歳にして「非モテ」から「モテ」へ、「剛毛」から「ツルツルモテ肌」に変貌を遂げた彼の前に待ち受けていた、衝撃の結末は!?

脱毛器男子3

「30歳くらいになったら、自分も結婚するんだろうな」

 

なぜか、大学生くらいからずっとそんな風に思っていました。モテたから? いやいや、正直全然そんなことないです。もちろん、彼女のひとりやふたりいなかったわけではないですけど。まああくまで普通な感じ。

 

自分は出身大学がいわゆる日東駒専と呼ばれるところ。就職も現役で決まったけど、中堅のIT企業で年収も30歳で400万くらい。中肉中背の、どこにでもいるような普通の青年です。顔? そうですね、たまに言われるのは「嵐の二宮君似」ってセリフ。自分では思ったことはないんですけど、人が言うならそうなのかもしれません。

 

つまり、僕はこの東京という街ではどうあがいても埋もれてしまうような、平凡なスペックの人間なんです。変に上を見てもがっかりするだけ。だからこそ、「とにかく謙虚に」という言葉を胸に今までやって来ました。

 

おまけに、コンプレックスもありました。僕は毛が人よりも濃いんです。「男なんだからあって当然でしょ」と言う人もいるかもしれないけど、顔に合わないギャランドゥを見ると、多くの女子は引くでしょう。高校の頃の部活でのあだ名は「ゴリラ」でした。今はスーツで隠してるけど、正直ベッド・インする前はいつも気になって仕方ないんです。

 

本当の自分を見てくれる「天使」との出会い

脱毛器男子2

そんな風に高望みせずに生きてるからでしょうか。25歳のときマユミと知り合った時は、「この子を逃しちゃいけない」って思いましたよ。彼女とは会社の同期と行った合コンで知り合いました。初対面からノリが良くて、とても話しやすい。見た目は、芸能人で言うなら吉岡里帆ちゃんを少しキリッとさせた感じ。和風な正統派美人です。

 

仕事は、当時はコールセンターに契約社員として働いていました。給料も僕より低くて、こんなことを言うと男としてどうなのかと思われるかもしれないけど、条件のわりに高嶺の花じゃなくて、正直こんな自分でも手に届きそうな気がしたんです。

 

一緒にお酒を飲みながら、僕はずっとマユミの綺麗な白い肌を見てました。「ノースリーブから覗く二の腕に触りたいなあ」「きっとすごくスベスベで柔らかいんだろうなあ」「大学時代、脱毛に通ったのかなあ」「それとも今も自宅でケアしているのかな」なんて思いながら。きっと、人一倍毛深い分、肌のきれいな女の子が好きなんでしょうね。

 

それから猛アプローチの甲斐あってなんとか付き合うことになったんです。彼女になってみてもマユミは本当にいいオンナでした。高いものをせびるでもない、過剰なサプライズを求めるでもない。その上、僕の家に来て甲斐甲斐しく世話してくれる。平凡だった自分の人生に舞い降りた天使だと真剣に思っていました。

 

女性

だから、30歳の冬に彼女に浮気が発覚した時は驚きました。マユミのやつ、僕と同時並行で年上の商社マンの男と付き合っていたんです。出会いは職場の友人に誘われて行った婚活パーティーで。もちろん、激怒しました。5年も付き合ったのになんで、俺は結婚を考えていたんだぞ、婚約指輪だって作ってる最中なのにって。

 

そしたら、彼女なんて言ったと思います? 「たくさん考えたけど、直樹の収入で幸せになれるかと考えたら不安になっちゃって」って言ったんです。

 

たしかに、僕の年収は400万円。あと10年頑張っても正直500万に届くかどうかってところで、ヘッドハンティングなんかがあるわけでもない。古風な考えのマユミには「夫婦共働き」って選択肢もなかったみたいで、つまり僕は金と天秤にかけられて、負けたんですよ。そういう意味では、某財閥系の老舗総合商社は、彼女から見ても満足な収入だったんでしょう。

 

ショックでした。男を「いいATMになるか」と見ているような港区女子ならまだしも、人間の心を持ってるマユミに捨てられたんですから。

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その後、マユミは同棲していたマンションから引っ越していきました。「男は別ファイル保存、女は上書き保存」なんて言いますけど、あれ本当だったんですね。じゃなければ、同棲している家から浮気相手の家に荷物送れないですよ。今でも、送り先の住所に書いてあった「港区」の二文字が、頭の中でフラッシュバックします。
続く

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