東京脱毛器男子3 「偽りの自分を演じる飢えた獣たち」

5年間交際した彼女マユミに二股をかけられた後、財閥系商社マンへと乗り換えられ、捨てられた男・鈴木直樹(30)。傷心の中で出会った同い年のユウヤに誘われ、移り住んだのは六本木のタワーマンションだった。

 

彼はコンサルティング会社の若き経営者。その独特なカリスマ性に、男女問わず多くの人々が寄せ付けられる。

 

もちろん、直樹もそのひとり。もっとも、ユウヤに夢中になっている時は自分が周りからどう見えているのかなんて、まだ気付かなかったのだが……。

 

経済力だけでなく、女性からもモテる色男のユウヤに影響され、直樹はすでに足の指の毛を剃っていた。

 

彼の肌にこびり付いていた剛毛が少しずつ薄れていくにしたがって、彼は男としての皮を一枚一枚脱いでいく。すると、周囲からの見方も少しずつ変わってきて……?

狂乱のホームパーティー 偽りの自分を演じる飢えた獣たち

男性

「またなんの因果で港区に住むことになってんだろ、俺」

 

ユウヤに誘われ、このタワマンに住み始めた時、内心思っていました。だって、俺を捨てたマユミが移り住んだのも港区だったんですから。今でも、一緒に同棲していた家から段ボールを港区に住む商社マンの家に郵送していたのを思い出します。

 

もちろん、港区にも赤坂、青山、麻布、白金台、さらには品川の一部まで、色んなところがありますし、そんな意識するようなことでもないんでしょうけど。でも、どうせなら今の俺より少しでも低い家に住んでいて欲しいな、なんて。

 

だってそのほうが、見下せるような感覚が味わえるじゃないですか。商社マンはたしかにスゴいですけど、今や俺もタワマン族ですからね。

 

この家に引っ越してきた時、夜景のスゴさにびっくりしたって言いましたよね? 最初は怖さすら感じたんですけど、正直なところ1週間で慣れてしまって、今ではなんとも思っていなかったり(笑)でも、今でも慣れてないものもあります。それは、毎週末部屋で行われるホームパーティー。俺とユウヤが住む部屋は2LDKだから、そういうこともできちゃうんです。

 

パーティーには毎週色んな人が来るんですけど、みんなに共通しているのは社会的階層の高さ。男はみんなユウヤの仕事仲間で、半分は経営者。六本木や渋谷、恵比寿の一等地にオフィスを借りてるような、めちゃくちゃ仕事のできるやつらです。

 

残りの半分も、D社やH社などの誰もが知ってるような大手広告代理店から、キー局プロデューサー、国際的投資銀行までさまざま。

 

肝心の女はというと、これがもう驚くほどの美人ぞろい。ミスコンに出場している現役の女子大生に、芸能事務所所属の駆け出しタレントにモデル。つい最近まで埼玉の実家に戻っていた自分には、考えられないくらいの華やかな面々ですよ。

 

でも、そんな華やかな世界は自分にとっては非常に落ち着かない環境でもあるんです。

 

「お仕事何されてるんですか?」

 

「どこで働かれてるんですか?」

 

「大学はどちら? 留学とかされてたんですか?」

 

初対面の人間同士で何気なく繰り広げられる会話。しかし、中堅大学を普通の成績で卒業して中堅企業で働いてきた俺みたいな人間にとっては、地獄のような質問です。

 

合コンの時とかでもあるじゃないですか? 会社の名前言った後に、女子たちがする「へえ~」って顔。その瞬間に明らかに俺への興味が失せて、後は生返事みたいな。

 

だから、ホームパーティーでも最初は自分のことを話すのをためらっていたんです。そしたら、それに気づいたのか、ある日のパーティーでユウヤが俺にこう耳打ちしてきたんです。

 

「大丈夫、ここに来てる男で本当のことを話してるやつなんかいないから」
 
続く
 
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