東京脱毛器男子最終話「直樹(31)新しい人生の幕開け」

31歳、男ひとり 「成長」を信じ進んだ先にあった深い孤独

Suburban residential area of Japan
ユウヤの派手な人柄、暮らしに惚れていました。それは自分が「普通」な人間で、人一倍「謙虚さ」を心掛けて生きてきたから。

 

しかし、やっぱり世の中ってそんな簡単に上手くいくもんじゃないんですね。真面目に頑張ってもなかなか報われない。正社員で働いても、薄給で企業に搾取される時代。お金を稼ごうと思ったら、ユウヤみたいに「自分より弱い人間」から奪い取るしかないのかもしれません。

 

とくに、才能も努力もない俺のような人間には。でも、そんなことはしたくないんです。

 

気づけば、「マユミとの結婚資金に…」と思ってコツコツ貯めていた300万円は消え、無一文になっていました。そりゃそうです。1回1万以上する飯を何度も食べて、毎晩のように夜遊びに繰り出してたんですから。

 

え? 脱毛にお金がかかったのもあるんじゃないかって? いえいえ、違いますよ。俺が使ってる『ヤーマン』の家庭用脱毛器は、一度買えばどの部位でも使えるやつなんで。最初に買うのは数万~十万円くらいするけど、逆に言えばそれしかかかりようがないんです。だから、俺がツルツルになったのにお金はそんなにかかっていません。

 

すみません、少し脱線してしまいました。埼玉の地元に戻ると、イロイロと状況は変わっていました。たとえば、地元の友人たちはみな結婚して子供がいるとか。

 

中高時代、勉強のできない彼らのことを内心馬鹿にしていたけど、今となれば稼ぎは多くはないけど家賃のかからない田舎で暮らし、遊びもイオン、食事もファミレスだけど、なぜかみんな楽しそうに生きています。

 

「もしかすると、マイルドヤンキーこそ、身の丈をわきまえた賢いやつらなのかもな……」

 

だからといって、SNSに逃げ込めるわけでもありません。Facebookでは元恋人・マユミの結婚報告が流れてきたんですよ。悔しいけど、俺と別れた時より美人になってました。隣の花婿もイケメンで、僕よりずっとお似合いな感じ。

 

何度か遊んだことのある、マユミの女友達もみな、ふたりの門出を祝福している感じでした。一体、この何割が二股を知っていたのか。情けないけど、考えれば考えるほど女々しくなりました。地元のカラオケ屋に十年ぶりにひとりで入ってミスチルの『Over』を歌いましたね……(笑)

 

結局、俺は女にも男にも裏切られたのかもしれません。「こんなイイオンナいるんだ」と思わせてくれたマユミも、「こんな格好いいオトコいるんだ」と思わせてくれたユウヤも、じつは本当の姿は俺になんか見せてくれてなくて、俺も彼らに「理想像」を押し付けていたのでしょう。

 

そんな風に考えていると、気づけば31歳の誕生日を迎えていました。まったく、この1年は波乱万丈過ぎました。

 

そうそう、仕事でも大きな変化がありました。部長が出世競争に負けたことで、プロジェクトに大きく携わっていた自分まで出世街道から外れることになったんです。

 

一方、不倫関係にあった後輩のマリコは、その直後に引き抜きがあり、今では新進気鋭のスタートアップで美人広報として活躍中。じつは、うちに勤めてる間から何社かと常に接触していたみたいです。あんなに忙しくしていたのによくそんな余裕があったなと思うと同時に、

 

「世の中、結局綺麗な顔してしたたかに生きたやつが勝つんだな」

 

って思っちゃいます。

俺に残ったのは綺麗なお肌だけ 心も痛まない傷つけない「脱毛器」

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300万のお金と彼女と親友を失い、俺に残ったもの。それはキレイなお肌でした。心は傷でボロボロになっているのに、お肌はツルツル。「むきたてのゆで卵」みたいです。周りからも

 

「鈴木さん、最近なんか若くなりましたね」

 

「なんかいいことあったんですか?」

 

って聞かれるくらいで。皮肉な話ですよね、ほんとに。いいことなんてこれっぽっちもないのに(笑)

ヤーマン』の家庭用脱毛器は肌への負担も少ないし、お金もかからないし、なによりサロンやクリニックに通う面倒がなくて続けられましたね。カミソリを使うと傷つきやすいし毛穴も目立つけど、これだとその心配もないんですよね。

 

でも、一度キレイになると、今まで気にならなかったような些細な部分が気になり始めるんですよ。アマゾンの密林がなくなって、近所の公園の木々が目立つ、みたいな感じかな? 俺にとってそれは「乳首のムダ毛」でして。長い毛と短い毛が、合わせて数十本くらい。長いやつは時々抜いたりしてるんですけど、すぐに生えてきて元に戻ってしまうって感じだったんですよね。

 

だから、数ヶ月間の努力を完成の仕上げに、乳輪周りのムダ毛を処理することにしました。

 

彼女もすべてを見せ合えるルームメイトもいない今、もはや誰に見せるわけでもないですが、ここまできたら自己満足が大事。

乳輪の痛みも少なく

レーザー脱毛はメラニン(肌の黒い色素の部分)に反応する仕組みになっています。だから、乳首は他の部位に比べても反応しやすくて、ゆえに照射の強さを調節するのが大事みたい。『ヤーマン』の家庭用脱毛器だからあまり心配してなかったけど、実際痛みはほとんどありませんでした。もしかすると、俺の乳首がキレイなピンク色だったのも影響しているのかな?(笑)

男は泣いて泣いて、やっと磨かれる

Hands of man handing business card
環境が変わったことがきっかけで、俺は大きな決断をすることにしました。それは「転職」です。新卒で入社して以来、ずっと勤めていた会社を辞め、異業種の会社に移りました。クビ? いえいえ、そんなまさか。じつは例のプロジェクトを買ってくれている人がいて、その人に誘われたんです。

 

数年前に知り合ってFacebookでは繋がっていたものの、とくにやり取りはしていなかった相手なのでびっくりしましたが……世の中、捨てる神あれば拾う神ありなんですね。地道な努力をしてきて良かったと思います。

 

この1年たくさん泣きました。良くも悪くも色んな経験をして、以前の自分とは大きく変わりました。心の傷はまだ癒えそうにはないけど、でも今の自分には「清潔感」があります。この綺麗な「タマゴ肌」のおかげで、オフィスでも女子社員からのなかなかの評判。今のところ上手くやれています。結局、この東京という街で自分は何者にもなれなかったけど、そんな人生もありなんじゃないかなって最近は思うんです。

 

綺麗な夜景も、小さなライトがいくつも集まってできてるわけじゃないですか? 俺は、そんな小さなライトである自分に、誇りを持とうと思うんです。

※※※※※

東京という移り変わりの激しい街で、人は何者かになろうとする。成功や幸福を願い努力するが、一方で歪みがあらわれ、それに胸を悩ます……そんな業の深い街だ。

 

しかしながら言えるのは、「本当に素敵なオトコ」は磨かれて磨かれてこその先にあるということ。困難を乗り越えたメンタルと、脱毛によって得られた綺麗な肌は、直樹に新しい人生の道を拓いてくれることだろう。

《完》

続く

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